Essay

高く売れるドメイン?それ、誰が高く買ってるって?

僕には昔からの持論がある。いわゆる「高く売れるドメイン」は、実はあんまり役に立たない。

検索が当たり前になってから、アドレスバーに名前を直打ちすることはほとんどなくなった。それでも短い英単語のドメインには、今も途方もない値段がつく。あれは一体、何の値段なのだろう。

この持論をAIにぶつけてみた。

Google、Apple、Microsoft。この三つを、まだ誰も知らない名前として査定してみてほしい。今の会社の姿を見てはいけない。

AIの答えはAppleだった。短い。誰でも綴れる。辞書に載っている。意味も明るい。Googleは意味のない造語で、Microsoftは長い合成語。ドメインの世界では、たぶん教科書通りの答えだ。

でも、apple.comなんて、ただのりんごではないか。

持ち主は農家かもしれないし、りんごの通販をするだけかもしれない。そこに天文学的な値段がつくのは、Appleという巨大企業が現実に存在するからだ。

つまり「apple.comは高い」という判断は、知らないふりをしながら、こっそり今のAppleを見ている。


ここで少し、話が逆なのではないかと思った。

一般名詞はブランドになりやすい、と言われる。AppleもAmazonもそうだ。だが、そう見えるのは、それらの会社が勝ったあとだからではないか。

辞書には無数の単語がある。どの単語が未来の企業名に選ばれるかは、選ばれる前には分からない。apple.comも、banana.comも、その時点ではたいして変わらない。

成功した会社がその名を選んだから、その言葉が特別に見える。特別な言葉を選んだから成功したわけではない。

良い名前は、成功の原因ではなく、成功の戦利品なのだ。

無名の会社がAppleを名乗っても、検索結果ではりんごのレシピに埋もれるかもしれない。短くて一般的な名前ほど、守り続けるには力がいる。

王冠は王を作らない。王だけが、王冠を被れる。


ただ、王道すぎる名前はまた別だと思う。

money.comやbusiness.comのような名前は、いかにも強そうに見える。けれど、すべてを指す言葉は、何も指していないのとあまり変わらない。

ブランドの役目は、他と違うと伝えることだ。Appleがコンピュータ会社の名前として働いたのは、りんごがコンピュータではなかったからだ。

少しずれているから、覚えられる。王道だから強いのではなく、王道から外れているから情報になる。

そう考えると、事前に「役に立つドメイン」というものは、たぶん存在しない。

分かりやすい名前も、感じのいい辞書語も、意味のない造語も、中身がなければただの文字列だ。価値を生むのは、いつも名前の内側にあるものだ。

名前とは、中身が注ぎ込まれるのを待っている空の器なのだと思う。

その器に、中身が入る前から高い値札をつけて眺めるのがドメイン市場なのだとしたら、やはり僕には、少し縁のない趣味の世界に見える。